縄文の精神は今でも
1980年代にバブルが来ると
地価や株価が上がり、
商売もまた熱狂の中にありました。
ブランド品が飛ぶように売れ、
高級レストランに予約が取れず、
ゴルフ場の会員権が億を超える値段で取引されました。
一万円札を手で振らないと
タクシーが停まってくれない時代は
「売れれば何でもいい」という
ある意味、国民全員の感覚がバグった時代でもありました。
しかし、お祭りは長く続きません。
1991年にバブルが崩壊しました。
地価も株価が下がり、
全てが一気に収縮したのです。
そして、この崩壊は
商売の世界に決定的な変化をもたらします。
お客さん達の「安さ」への需要が、
極限まで高まりました。
そして、その需要に応えたのが、
大型ショッピングモールとチェーン店の全国展開だったのです。
田舎町や郊外に巨大なショッピングモールが生まれました。
広大な駐車場で均一な空調、
全国どこでも同じテナントです。
イオン、ダイエー、ジャスコ…
「車で行けて、何でも揃う」というスタイルが、
新しい商売の標準になりました。
そして同時に商店街から、
人が消えていきました。
シャッターが下りる店が続出し、
「シャッター商店街」という言葉が生まれました。
このシリーズの最初の方でお話しした
「差別化の集積が無個性をつくる」という話を覚えてますか?
モールのテナントは、かつてそれぞれが差別化を追求した
「勝ち残った店」たちです。
しかし、同じ勝ち筋を持つ店が一つ屋根の下に集まると、
全体が均質になるのです。無個性になるのです。
全国どこのモールに行っても、
同じ店が並んでいるのは、
どこに行っても、その土地独特のものが無くなる。
という事です。
お詣りや物流などで人が往来し、
その中で育んできた「その土地ならではの風情」が
少しずつ消え、均一になり、
「地元でも見れる景色」が日本中を覆いました。
チェーン店も同様です。
コンビニ、ファミレス、カフェチェーンでも
マニュアル化された接客や均一化された商品、
都心でも地方でも同じ店内、
最適化されたレイアウト…。
どこへ行っても同じで
どこへ行っても安心。
しかしどこへ行っても、
「また来たい」という特別な理由がないから
クーポンや割引で再来店を促します。
我々顧客は確かに「便利さ」を手に入れましたが、
「楽しみ」や「愛着」、「価値」は確実に失いました。
あ、ちなみに私はチェーン店は極力利用しません。
何故なら「地方のお金」を中央に集金する仕組みだからです。
地元のお客さんがお店で買い物しても、
地元に残るお金はどれくらいでしょう?
日本全体をひとつの体として捉えた時、
不均衡が生まれるのは「不健康になる」のが法則だからです。
2000年代に入ると、
インターネットが商売を変えていきます。
楽天、Amazon、価格比較サイトなど、
「最安値を探す」という行動が当たり前になりました。
商品の価値より価格の低さが
選ばれる基準になったのです。
物の価値が分からなくなっていく時代の到来です。
「今だけ金だけ自分だけ」の商売が、
デジタルという新しい舞台で再び勢いを増しました。
そして2020年コロナ禍が来ました。
商店街やモール、飲食店も閉まりました。
しかし、ここでも日本の商売人の生命力は消えませんでした。
テイクアウトを始めた飲食店や、
オンライン販売を始めた職人さん、
SNSで直接お客様と繋がり始めた店主達が
「形を変えて続ける」という
縄文から続く日本の商売人の本能を
またしても発動させたのです。
そして今、2026年。
今はAIが商売を変え始めています。
私がこれまで何度もお話ししてきたように、
AIは「作業」を引き受けてくれますが、
人のぬくもりや、ストーリーは持てません。
チェーン店が「便利さ」で商店街を脅かしたように、
AIはこれから「効率」で人間の商売を脅かします。
しかし、歴史を振り返ると見えてくることがあります。
縄文の時代から今日まで、
商売の「形」は何度も変わりました。
物々交換が市になり、
座になり、商店になり、
百貨店になり、チェーン店になり、
ECサイトになり、そしてAIが関わる時代になりましたが
変わらなかったものがあります。
それは「商売は人と人との間で行われる営み」である。という事実です。
そして、いつも最後は
「誰かの役に立ちたい」という
純粋な動機を持った商売人が残り続けていた。
という事です。
掛け値で騙した商人、米を買い占めた商人
バブルで膨らんだだけの商売は消えたのです。
しかし、三方よしを守り続けた近江商人の流れは残り、
のれんを守り続けた大坂商人の系譜は残り、
焼け野原から「誰かのため」に立ち上がった
商売人の精神は残り続けたのです。
AIが均質化を加速させるこれからの時代に、
最も輝くのは
泥臭い経験を持つ商売人です。
不完全だけれど「この人だから」と選ばれる商売人です。
便利さではなく「温かみ」が魅力の商売人です。
「今だけ金だけ自分だけ」ではなく、
「三方よし」を体現する商売人です。
縄文から続く日本の商売の魂が、
これからの時代感の中で
再び開花するのです。
私の大好きな石田梅岩は
「実の商人は先も立ち、我も立つことを思うなり」
本物の商売人とは、
相手も栄え、自分も栄えることを考える者だ。
と言いました。
この言葉は江戸時代に生まれましたが、
その精神の根は縄文時代の物々交換にまで遡ります。
そしてこの言葉は、
AI時代の今も「商売の哲学」として生き続けています。
我々の商売は今、この長い歴史の流れの途中にあります。
しかし、その立ち位置は皆、異なります。
縄文から続く「誰かの役に立ちたい」という
純粋な動機を持っていれば、
それは続く道です。
その動機がある限り、
商売は歴史の一部として続いていきます。
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望月まもる(集客支援コンサルタント)地域の商いを見続けて40年。整体・接骨院の勉強会で約10数年講師を務めております。商工会や行政、工務店・リフォーム会社、各種サロンなどの業界団体でも、セミナーや講義・勉強会・研修を行っております。クライアントは、接骨院・整体院・各種サロン業・物販・通販会社・製造業・学習塾・音楽教室・リフォーム会社・工務店・ポスティング会社など多岐にわたります。著書:「儲けるポスティング損するポスティング」「『集める』から『集まる』店へ」