道は消せなかった
1868年明治維新。
江戸幕府が倒れた瞬間から、日本の商売は大きく揺らぎました。
しかし、それは商売だけの話ではありませんでした。
それまで「道」と名のついたもの…
武士道、茶道、華道、柔術、鍼灸、陰陽道などこれらが一斉に、時代遅れのものとして切り捨てられていきました。
「富国強兵」「文明開化」
この二つの掛け声のもとに、
何百年もかけて磨かれてきた
日本の叡智が次々と否定されていったのです。
最もわかりやすい例が、
「陰陽寮」の廃止です。
平安時代から続く陰陽寮は、
約2000年もの間、暦を作り、吉凶を占い、国家の方針に深く関わってきた機関でした。
しかし明治政府はこれを「迷信」として廃止します。
1873年太陽暦の採用とともに、
陰陽道は公的な地位を失いました。
何百年もの知恵の蓄積が、
「近代化の邪魔」として
一言のもとに切り捨てられたのです。
あ、これ…。
実は我が国にとって、とんでもない国難を招く愚策だったのですよ。
そして、接骨・鍼灸の施術家たちも、
同じ運命を辿りました。
江戸時代、按摩・鍼灸・接骨は、
庶民の医療として深く根づいていました。
しかし明治政府は、
西洋医学を「正統な医学」として採用し、1874年に「医制」を発布します。
これにより、西洋医学の免許を持たない伝統的な施術家たちは、正規の医療従事者としての地位を失いました。
何代にもわたって技を磨いてきた施術家が、「無免許」の烙印を押されて
端に追いやられていったのです。
当時の先生達の悔しさたるや、どれほどだった事でしょう…。
しかし、彼らは消えませんでした。
地域の人々が政府に猛反対し、施術家達の味方となり、ついに国も認めざるを得なくなったのです。
その流れが、今日の接骨院・整体院文化が原点なのです。
地域の人達に支持され、守られたのです。
そして所変わって京都の商売への打撃も甚大でした。
千年以上、日本の都として君臨してきた京都…。
天皇がいて、貴族がいて、
朝廷があった事実全てが
京都たる所以でもあり、
京の商いの根幹でもありました。
御所に出入りする呉服商や
公家の注文を受ける漆職人、
宮中行事を支える料理人達…。
天皇の存在が、
京都の商売の格と格式を
支えていたのです。
しかし、1869年、
天皇は東京へ移りました。
「東京奠都」です。
一夜にして、
京都の商売の根っこが消えました。
「お上がいなくなった」というその衝撃は、単なる経済的な打撃ではありませんでした。
今でも京都の人は
「お上は少しの間、東に行ってるだけ」という表現をしますが、
実の所は、千年続いた都の誇りが、
根こそぎ引き抜かれるような、
存在の危機だったのです。
しかし、この時、
京都の商売人たちは底力を見せます。
嘆いておらず、動いたのです。
御所専門で出入りしていた人は、
一般人向けの商いを始めたり、
西陣織の職人たちは、
フランスのリヨンへ人を送り込み、
ジャカード織機の技術を学んで持ち帰りました。
伝統の技に、西洋の機械を組み合わせ、「古いものを守る」だけでなく、
「新しいものを取り込んで進化する」という選択をしたのです。
京都の老舗が今も残っているのは、
この時代の商売人たちの覚悟と知恵の賜物なのです。
そして、明治政府が推進した「廃仏毀釈」も、商売に大きな影を落としました。
日本の商業は参道と寺社を中心に
発達してきました。
門前町の商売人たちは、
参拝者を相手に生計を立てていましたが、廃仏毀釈によって、
多くの寺が廃され、仏像が破壊され、
参拝者が減りました。
神仏と商売が一体となって
育んできた文化が、
政治の一声で壊されて行ったのです。
これもまた、
明治という時代の「闇」の一面でした。
私はこの廃仏毀釈を止めたのが、
西洋人であるフェノロサという部分にも、深い感謝とやるせない気持ちを持っているのです。
しかし、どれほど時代が変わっても、
「人の役に立つ」という商売の本質は
消えませんでした。
陰陽師の知恵は、形を変えて民間に生き続けました。はい。今でも存在しています。
接骨の技は地域の信頼の中で生き続けました。あなたの街にもありますよね。
京都の職人の感性は、西洋の技術を取り込みながら生き続けました。
「道」は廃止されましたが、
「道の精神」は完全に消す事など出来なかったのです。
明治の「平等意識」は、身分制度の解放をもたらし、誰もが苗字を持ちました。
しかし同時に、長年積み上げてきた「道」の価値を否定、打ち壊しもしました。
全てを西洋の基準、モノサシで測るこの時代に、日本の商売人たちは何を守り、何を手放したのでしょう?
文明開化の熱狂の中で日本の商売は、どう変容していったのでしょうか?
つづく
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望月まもる(集客支援コンサルタント)地域の商いを見続けて40年。整体・接骨院の勉強会で約10数年講師を務めております。商工会や行政、工務店・リフォーム会社、各種サロンなどの業界団体でも、セミナーや講義・勉強会・研修を行っております。クライアントは、接骨院・整体院・各種サロン業・物販・通販会社・製造業・学習塾・音楽教室・リフォーム会社・工務店・ポスティング会社など多岐にわたります。著書:「儲けるポスティング損するポスティング」「『集める』から『集まる』店へ」