「価値」とは何か。虫の目と鳥の目で考えてみよう
あなたは今、自分のサービスの「価値」をどこで測っていますか。
技術の高さ?資格の数?他と比べた優位性?
もしそこだけで測っているなら、今日の話をじっくり聞いてください。
価値とは、あなたが思っているよりはるかに多層的なものです。
まず、虫の目で見てみましょう。
虫の目とは、目の前の一人のお客様にぐっと近づいて見る目です。
一人のお客様が、あなたのところに来るまでに、何があったかを想像してください。
ネットで調べた。誰かに聞いた。勇気を出して予約した。当日、少し緊張して扉を開けた。
その人は、何を持ってきたのか。
症状や悩みだけではありません。その悩みを抱えて過ごした時間。誰にも言えなかった不安。「これで良くなるだろうか」という、小さな、しかし切実な希望。
あなたのサービスが触れているのは、その希望の部分です。
技術が届いているのは、体や問題だけではない。その人の「生活」と「感情」と「未来への期待」に、あなたは同時に触れています。
これが、虫の目で見た価値の正体です。
ところが、新米の商売人はここで止まります。
「良くしてあげた」「解決してあげた」
それで完結させてしまう。
しかし虫の目をもっと近づけると、まだ見えていないものがあります。
その人が帰った後の生活が、どう変わったか。
痛みが取れて、久しぶりに孫と散歩できた。悩みが整理されて、翌朝、家族に笑顔を見せられた。自信が戻って、仕事でまた前を向けた。
あなたのサービスの価値は、施術室や相談室の中で終わっていません。
その人の人生の、続きの中に生きています。
その続きまで想像できたとき、あなたは初めて、自分の仕事の本当の価値に気づくことができます。
次に、鳥の目で見てみましょう。
鳥の目とは、高く上がって、広い文脈で見る目です。
あなたの商売は、社会の中でどんな役割を果たしているか。
一人の接骨院の先生が、地域の高齢者の痛みを取り続けることは、その人たちが自立した生活を送れることに繋がります。
自立した高齢者が増えると、家族の負担が減ります。地域の医療費が減ります。その家族が、仕事や子育てに集中できます。
一人の経営コンサルタントが、中小企業の経営者の意識を変えることは、その会社の従業員の働き方を変えます。従業員の家庭が変わります。地域の経済が変わります。
あなたの商売は、目の前の一人に届いているだけではありません。
その一人を中心に、波紋のように広がる影響の連鎖の、起点に立っています。
経済学者のアダム・スミスは『道徳感情論』の中で言いました。
「人間は、他者の境遇に関心を持ち、他者の幸福を自分のことのように感じる能力を持つ」
商売の価値とは、この「他者の幸福を自分のことのように感じる能力」が、形になったものです。
技術やサービスは、その器に過ぎません。器の中身は、あなたの「他者への関心」です。
もう一つ、鳥の目で見えるものがあります。
時間軸です。
今日来てくれたお客様が、10年後にどうなっているか。
あなたのところに通い続けた結果、健康でいられた。経営が安定した。人生の選択肢が広がった。
その10年後の姿が、今日のあなたのサービスの「本当の価値」です。
目先の一回の体験だけで価値を語るのは、種を蒔いた翌日に「芽が出ない」と嘆くようなものです。
虫の目と鳥の目、両方で見えてきたことを整理しましょう。
価値には、四つの層があります。
一層目——機能的価値。痛みが取れる、問題が解決する、という直接の結果。
二層目——感情的価値。安心した、信頼できた、また来たいと思った、という感覚。
三層目——生活的価値。その後の日常が、どう変わったか。
四層目——社会的価値。その人を中心に、周囲の人や地域にどんな影響が広がるか。
新米の商売人は、一層目だけを売ろうとします。しかしお客様が、財布を開く理由は二層目から四層目にあることが多い。
松下幸之助翁はこう言いました。「商売とは、世の中に価値を提供することである。利益は、その結果としてついてくるものだ」
利益を追いかけると、一層目だけになります。価値を追いかけると、四層すべてが動きます。
あなたのサービスの価値を、一層目だけで語らず、
目の前の一人の、その先の人生まで想像してみるのです。
その一人が、社会の中でどんな役割を持っているかを感じるのです。
虫の目で深く。鳥の目で広く。
その両方で見えたとき、人は初めて、自分の仕事の価値を本当の意味で語れるようになります。
そしてその言葉が、正当な価格への、最も力強い根拠になります。
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望月まもる(集客支援コンサルタント)地域の商いを見続けて40年。整体・接骨院の勉強会で約10数年講師を務めております。商工会や行政、工務店・リフォーム会社、各種サロンなどの業界団体でも、セミナーや講義・勉強会・研修を行っております。クライアントは、接骨院・整体院・各種サロン業・物販・通販会社・製造業・学習塾・音楽教室・リフォーム会社・工務店・ポスティング会社など多岐にわたります。著書:「儲けるポスティング損するポスティング」「『集める』から『集まる』店へ」